今のままの請求書では得意先が受け取らない?(インボイス対応の請求書導入へ)

提出した請求書を受け取ってもらえない。
うっかりしていると、こんな事態に陥る可能性が全ての事業者様において起こり得る状態です。
これは由々しき事態です。

請求書のインボイス対応という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
これは消費税の軽減税率が開始された事が理由になるのですが、
このインボイス対応を行わないと、請求書を受け取ってもらえなくなります。

「うちはもうインボイス対応済みだから大丈夫!」
そう思われている方は要注意です。というのも2021年9月時点では
インボイス対応を完了している企業はありません。

というのも、インボイス対応の請求書「適格請求書」の必須事項に
請求書を発行した企業の「登録番号」というものがあるのですが、
この番号は申請しないと使えません。
そしてその申請は2021年10月1日から始まります。
つまり9月時点ではインボイス対応は完了できないのです。

では気になる申請の流れですが
1:税務署に登録申請書を提出
2:税務署で審査
3:税務署から通知

という形です。そこまで完了して初めて登録番号を使用する事が可能です。
ちなみに登録番号ですが「T」の後に企業の法人番号が記載されるだけです。
法人番号は既に通知がされているものです。つまり通知前でも登録番号は分かってはしまいます。
しかし、申請前に使用する事は出来ません。あくまで登録完了の通知が税務署から届いてからとなります。

では、何故インボイスの対応を行わないといけないのでしょうか?
それは得意先が「消費税の仕入税額控除」を受けられなくなるからです。

仕入税額控除とは何かというと、消費税の二重課税を解消するための制度です。
この言葉だけでは分かりづらいので例を挙げてみます。

(例)
1:税抜1,000円、消費税100円、合計1,100円の商品を仕入

2:仕入れた商品を税抜1,200円、消費税120円、合計1,320円で販売する

3:国に納付する消費税は、販売した時に受け取った消費税「120円」から仕入れた時に支払った消費税「100円」を差し引いた額「120円-100円=20円」となる

要するに、納付する消費税を少なくすることが出来る制度です。(節税ではなく二重課税を防いでいるだけです)

では、インボイス非対応の請求書で仕入税額控除が受けられない場合はどうなるのでしょうか?
先ほどの例において、「1で仕入れた商品の請求書がインボイス対応ではなかった場合」で説明すると以下の通りです。

1:税抜1,000円、消費税100円、合計1,100円の商品を仕入れたが、請求書がインボイス対応では無かった

2:仕入れた商品を税抜1,200円、消費税120円、合計1,320円で販売する

3:国に納付する消費税は、販売した時に受け取った消費税「120円」から仕入れた時に支払った消費税「100円」を差し引いた額にしたかったが、仕入税額控除を受けられなかったので「120円」となる

つまり仕入先の請求書がインボイス非対応だったがために、販売店は多くの消費税を国に納付しなくてはならなくなりました。
こうなると、インボイス非対応の仕入先からは商品を購入したくなくなります。

では、インボイス対応の請求書とはどのようなものでしょうか?

必要な事項は以下の通りです。
① 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(買った人の名前)
② 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(売った人の名前と登録番号)
③ 取引年月日
④ 取引内容(軽減税率対象品目であることを分かるようにする)
⑤ 税率ごとに区分して合計した額(税抜または税込)及び適用税率
⑥ 各税率の消費税額

このような内容を網羅していないと、インボイス対応となりません。
逆に、この対応を行っていないと、現在の取引先から請求書を突き返される事になりますし最悪の場合、取引の停止にもなりかねません。そのため請求書の対応は必須となります。

そしてこの制度ですが、2023年10月1日から本格的に始まります。
よってそれまでの間にしっかりと準備をしておく必要があります。

現在、請求書に施している内容は「区分記載請求書」というもので、登録番号が記載されていないものを使用していると思います。したがって申請が可能になったらまずは申請を。そして請求書の変更も早めに行いましょう。
申請期間ですが2021年10月1日からなのですが、2023年10月1日から登録を受けるためには原則として2023年3月31日までに登録申請を行う必要があります。

制度開始直前ですと対応が間に合わなくなる恐れがあります。
というのも、近年は請求書発行をシステム化する企業がほとんどとなり、システムを委託している場合、プログラムの変更が順番待ちになる事が容易に想像できます。
その点からインボイス対応の請求書へ切り替えは時間的に余裕があるうちに対応をした方が良いです。